世界を旅し、美しい風景や歴史・文化を紹介するトラベルカルチャー誌TRANSIT。よりよい未来を拓くために、心身にも環境にもやさしいIntoの製品とともに各地を旅し、伝統的なものから新しい潮流まで、気になるライフスタイルを追いかけます。第6回は、スウェーデンのストックホルムからゴットランド島、スモーランド地方を旅した話。

橋、自転車、ストックホルム
ストックホルムに降り立った9月初旬。晴れたり曇ったり、時たま雨が降ったり、そんな日が数日つづいた。セーデルマルムにあるカタリナ・エレベーターから市内を見下ろすと、リッダーホルム教会があるガムラスタンをつなぐ橋を走る車や自転車がおもちゃのように見える。水の都といわれるストックホルムは14の島が連なっている。

大型フェリーでゴットランド島へ
ストックホルムで電気自動車を借りて、港のあるニュネスハムンまで1時間半ドライブ。車ごと7階建ての大型フェリーに乗り込み、出航。フェリー内には、お行儀のよい大型犬がたくさんいて嬉しい。なでさせてもらったり、バルト海をのんびり眺めたりしながら船の旅を満喫する。
photo by MINA SOMA

世界遺産の街、ヴィスビー
ゴットランド島の玄関口、ヴィスビー。13〜14世紀、ハンザ同盟都市として栄えた歴史をもち、ドイツ商人が住居を構えた街だ。歴史的建造物が保護された世界遺産の都市でもあり、カラフルな家や花に彩られ、絵本のなかを歩いているような気持ちになる。ジョギングする人も多く、走り出したくなる。少し高台に登ると、屋根のない廃教会の天井部分や、オレンジの屋根、そして遠くにバルト海を望むことができる。

ゴットランド島は岩の島
ヴィスビーより南に位置する景勝地Högklintへ。夏のリゾート地として大人気のゴットランド島だが、夏も終わりとなれば島も落ち着きモードで、ときたま観光客に会うくらいだ。バルト海の地平線を、自然の雄大さをダイレクトに受け止め、空の広さを噛み締める。

フォーレ島名物、奇岩のビーチ
ゴットランド島の北西部に、5分の渡し船で辿り着く小さな島がある。フォーレという、静かで謎めいた島だ。スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン監督が過ごした場所としても有名だが、ほとんど人に会うことはない。石灰岩でできた島のため、浜は平べったい。そこに奇岩群が突如現れるところが神秘性をさらに増している。

突如現れる風車
フォーレ島を走っていると、穀物倉庫に使われていた風車が時たま現れる。茅葺屋根のものや、4つの羽根をもつものなどいろいろな形がある。見つけると少し幸せ。牛や羊ものんびり放牧されていて、スローライフを夢想する。

本島へ渡り、スモーランド地方へ
ゴットランド島を後にして、またフェリーで本島へ上陸。今度はスモーランド地方だ。ヴィンメルビーの街を走っていたら、インパクトのあるヘラジカが迎えてくれた。スウェーデンはヘラジカ猟が盛んな国。ヴィンメルビー『長くつ下のピッピ』をうんだアストリッド・リンドグリーンの出身地ということもあり、この後ピッピの看板も流れてくる。

森はみんなのもの
光と森と湖の国、スウェーデン。森のなかにテーブルセットがあると、ここでフィーカ(スウェーデン人のお茶の時間)するのかな、と思いを巡らせる。誰でも自然を共有することができるという、北欧の「自然享受権」。雪が積もればスキーを、キノコの季節にはキノコ狩りを、春になれば花々を愛でる人たちが、この森を歩くのかもしれない。
photography & text=TRANSIT

TRANSIT70号
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