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Into the World エジプト編

2024.10.01

世界を旅し、美しい風景や歴史・文化を紹介するトラベルカルチャー誌TRANSIT。よりよい未来を拓くために、心身にも環境にもやさしいIntoの製品とともに各地を旅し、伝統的なものから新しい潮流まで、気になるライフスタイルを追いかけます。第1回は、古代からの暮らしが息づく、エジプト・カイロへの旅。

  

ナイル川沿いに発展したカイロへ

旅のはじまりは、古代エジプト文明を生んだナイル川の散策から。7世紀にイスラームが築いたカイロの街には、現在約1000万人が暮らし、市街地には高層ビルも立ち並ぶ。国土の9割を砂漠が占める乾燥地帯だが、ナイル川沿いには木々も茂り、目にも涼やか。全長6,695kmのナイルはゆったりとした流れで、悠然と時を刻んでいるようだった。

 

 

ギザの大ピラミッドから街を一望

エジプトに来たら、やっぱり見たい!というわけで、カイロ市街から15kmほどの距離にある、ギザの大ピラミッドへ。紀元前2550年頃に建設が始まった高さ約140mのクフ王のピラミッドに感激したり、内部を見学して古代へのタイムスリップ気分を味わう。ピラミッドが建つ小高い丘からカイロを一望できるのもドラマチック。一帯はキャメルライドでの移動もできる。

 

 

スフィンクスとピラミッド観光は早朝に

カフラー王の命により紀元前2500年頃に建設されたのが、人間の顔とライオンの体をもつギザの大スフィンクス。一枚岩で造られた世界最大の像で、大ピラミッドに寄り添うように鎮座する。ピラミッドとスフィンクスが写真に収まる参道は絶好のフォトスポットなので、ここは思い切って記念写真を撮ろう。なお、夏の日中は40度をゆうに超えるため、観光は早朝がおすすめ。

 

 

古代エジプトの至宝を堪能

古代エジプトへの関心が高まり、カイロ中心部のエジプト考古学博物館を訪れた。5000年の歴史をもつ古代エジプトの遺物を集めたこちらの博物館の収蔵品は約20万点。当時のファラオたちの暮らしや文化を知ることができる。「ツタンカーメン王の黄金のマスク」や、「ラムセス2世のミイラ」に「アヌビス像」など、古代エジプトのスターが勢揃いで大興奮。

※今後はツタンカーメンの黄金のマスクをはじめとする、エジプト考古学博物館の展示物は「大エジプト博物館」に移送される予定とのこと。

 

 

新旧入り混じるダウンタウン

ナイル川の東側に広がるダウンタウン。街角には日用品の露天商や飲食屋台が立っていて、人びとの日常風景が垣間見え、歩くだけで楽しい。夏休み期間のためか、小中学生の男の子が店番をしている姿も印象的だった。車道沿いに見えるのは、自転車のバイクシェアサービス。街中の移動にも活躍しそう!(夏以外は……

 

 

女性の社会進出も増えてきた

香水店でオープン準備をする若い女性。イスラームが9割で、ヒジャブで頭部を覆う信心深い女性が多いが、都市部では外で働く女性も増えてきている。イギリス統治時代のアパートなど、西洋風の近代的な建物も並ぶダウンタウンにて。ちなみに、海外の人も多く暮らし、洗練された店の多いマーディ地区では、キャップ姿のエジプト人女性にも出会った。

 

エジプト人の嗜好品、コーヒー

街を歩いているとコーヒー豆を計り売りするクラシックな趣のお店を発見。15世紀にペルシア(現在のイラン)でコーヒー豆が焙煎されるようになるとイスラーム圏でコーヒー文化が伝搬し、エジプトへは16世紀に伝わったそう。コーヒープレスで抽出する西欧のコーヒー文化も浸透しているが、トルココーヒーのように粉にお湯を注ぐスタイルが伝統。

 

 

主食のアエーシ・バラディ

カイロの人たちの主食は、アエーシ・バラディ(「私たちの土地のパン」という意味)という名のピタパンのような薄いパン。朝食ではターメイヤ(そら豆のコロッケ)などの惣菜やサラダと一緒に食べたり、おかずを挟んでサンドイッチのようにしていただく。ちなみにアエーシはエジプト方言のアラビア語で、「命」という意味もある。まさにエジプト人を支える食べ物。

 

 

散策のおともに焼き菓子を

古代エジプトの時代から麦を栽培し、数十種類ものパンやケーキをつくっていたエジプト。発酵パン発祥の地であり、パンの最先端の国だったといえる。小麦文化が受け継がれた現代も、通りを歩いていると菓子パンや焼菓子を製造・販売するマホブザートをよく見かける。クミンやナッツ、デーツといったアラブの香りが漂うスナックは、止まらないおいしさ。散策のおともに。

 

 

ダハシュールでの伝統的なパンづくり

伝統的なパンづくりを見学するため、カイロから車で1時間ほどの村・ダハシュールへ。ホルン・バラディと呼ばれる泥窯でお母さんが焼いていたのはアエーシ・バラディ。生地は小麦粉、塩、水、ハミーラ(天然酵母のサワードウ)のみというシンプルな材料ながら、噛み締めるほどに滋味深い味に感激。ナツメヤシの木を薪や調理器具に用いていたのも印象的だった。

 

 

大地のエネルギーに満ちた家庭料理

ダハシュールでいただいた昼食。アエーシ・パラディを主食に、モロヘイヤスープなどの家庭料理が並ぶ。中央左がパスタ入りのご飯、ロッズ・シャーレイヤ。中央がジャガイモにトマトソースをかけて焼いた、タジーン・バターティス。中央右が、ピーマンやズッキーニなどの野菜にお米を詰めて煮たマハシー。マハシーは金曜礼拝の日にみんなで集まりわいわいしながらつくって食べるのだそう。

 

 

エジプトの暮らしを支えるナツメヤシ

乾燥地帯でもよく育ち、古代エジプトの時代から重宝されてきたナツメヤシ。実がデーツとして食されるだけでなく、建築の資材や日用道具として木の幹や枝、葉も幹も余すところなく用いられる。イスラームの聖典であるコーランには22回も言及され、イスラームの世界においても神からの恵みであるとされている。木の幹は凹凸があり、ローカルは素足でするすると登っていく。

 

掲載号

TRANSIT65号 世界のパンをめぐる冒険 創世編

2024年9月12日発売
価格:1980円(税込)

 

https://transit.ne.jp/2024/09/002956.html

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